目次
要約:この判例のポイント3つ!
▶ 事故の内容
被害者Aが交通事故で死亡。Aの配偶者・子らが損害賠償請求。
▶ 論点
被害者側が加害者に損害賠償請求をする際、人身傷害保険の支払金はどこまで控除されるか?
▶ 最高裁の結論
- 保険会社の人身傷害保険金の支払分(契約限度内)は保険代位により処理される。
- 自賠責保険の「立替分」と認められる支払のみ、損害賠償請求額から控除される。
◆ 事件の概要:被害者が2台の車にひかれて死亡
被害者Aは、平成28年5月、車道上に横たわっていたところを2台の車に轢かれ死亡。
配偶者X1と子どもX2〜X4が、それぞれ加害者らに民法709条・719条に基づいて損害賠償を請求。
Aは事故当時、人身傷害保険付きの任意保険に加入。保険会社は、上限3,000万円の人身傷害保険金を支払い、さらに追加で3,000万円を支払っていた(合計6,000万円)。
◆ 原審の判断:全額「自賠責立替」扱いで全控除
原審(高裁)は、保険会社が支払った6,000万円すべてを「自賠責保険の立替分」と認定。
→ よって、遺族の損害賠償請求額から全額控除すべきと判断。
◆ 最高裁の判断:前半3,000万円は「人身傷害保険金」!
🔍 ポイントは「支払の性質」
保険会社が支払ったうち:
- **最初の3,000万円(保険金限度内)**は、人身傷害保険の規定に基づき「保険金」として支払われたもの
→ 保険代位により処理。控除は代位部分に限る。 - **追加の3,000万円(保険金限度を超える)**は、自賠責保険の立替金
→ 全額を遺族の損害賠償請求から控除。
💡 代位の意味とは?
保険会社が契約者に保険金を支払うと、その分だけ**保険会社が加害者に対して請求できる権利を「引き継ぐ」**ことを意味します(これを「代位」といいます)。
代位が認められるのは、契約で定めた保険金の範囲内のみ!
◆ 計算結果|最終的にいくら請求できた?
最高裁の修正後、遺族が加害者側に請求できる金額は以下の通り(いずれも弁護士費用含む):
請求者 | 最終認容額(元本+弁護士費用) | 備考 |
---|---|---|
配偶者X1 | 1,901万0006円 | 保険代位処理後の金額 |
子X2〜X4 各人 | 613万5430円 | 同上 |
遅延損害金も、支払時期に応じて計算されました(年5%)。
令和4(受)648 損害賠償請求事件
令和5年10月16日 最高裁判所第一小法廷 判決(破棄自判)