目次
要約|この判例のポイント3つ!
▶ 事故の内容
マイクロバスと乗用車が交差点で衝突。双方の車両に損害が発生。双方に過失あり。
▶ 論点
双方が不法行為に基づく損害賠償請求権を持っている場合、「相殺」はできるのか?
▶ 最高裁の結論
不法行為に基づく損害賠償債権どうしは、民法509条により原則として相殺できない!
◆ 事件の背景|どんな交通事故だったのか?
🚗 事故発生
昭和43年、新潟県長岡市の交差点で事故が発生。
- 被上告会社のマイクロバス(被用者Bが運転)と
- 上告人A1所有・A2運転の普通乗用車
が衝突し、双方の車両が破損。
事故原因は、マイクロバス運転者Bの過失が主だが、
乗用車運転者A2にも一定の過失があった。
◆ 争点はここ|損害賠償を「相殺」できるか?
原審(高裁)の判断
高裁は、次のように判断しました。
交通事故のように双方の過失で物損が生じた場合、
不法行為による損害賠償債権でも相殺できる!
→ よって、マイクロバス側の修理費分(5万8104円)を差し引いて、乗用車側への賠償額を減額。
◆ 最高裁の判断|相殺はNG、その理由は?
🔑 民法509条の趣旨とは?
民法509条では、不法行為に基づく損害賠償債務については、原則として相殺が禁止されています。
その理由は明確:
「被害者に現実に損害の填補を受けさせるべき」
→ 加害者の都合で相殺し、支払いを免れることは許されない!
🚫 双方が加害者でも「相殺NG」
この事件では、双方に過失がある交通事故であり、
一見すると「お互い様だから相殺してもよさそう」に思えます。
しかし最高裁は断言:
「不法行為によって生じた債権は、性質上相殺できない。
たとえ物損でも、原則として民法509条が適用される。」
◆ 結果|損害額はどうなった?
A1の請求が一部認められる
原判決が誤って「相殺を認めた」部分(=5万8104円)について破棄。
→ A1は本来の損害額である27万2800円+遅延損害金を受け取れることに。
昭和47(オ)36 損害賠償請求 昭和49年6月28日 最高裁判所第三小法廷 判決 その他