目次
要約|この判例のポイント3つ!
▶ 事故の内容
通勤途中、脱輪車から降りた被害者が、別の車に衝突されて重傷・後遺障害。
加害者に損害賠償請求。
▶ 論点
労災や障害年金などの公的給付があった場合、どのように損害賠償と「損益相殺」するか?
▶ 結論(最高裁)
- 給付金は損害の「元本」に対してのみ相殺すべきで、遅延損害金との調整には使えない。
- 給付が制度に則って支給された場合、その時点で「元本」が補填されたと見なす。
◆ 事件の詳細|どんな事故だったのか?
🛑 事故の発生(平成14年3月6日)
通勤中、脱輪した車から降りて路肩にいた原告(被害者)が、加害者の運転する車に衝突され、
- 右大腿骨開放骨折
- その後、右足の切断、左膝の重度障害
という重大な後遺障害を負った。
💰 被害者が受けた補償
被害者は事故後、以下の補償・給付を受けた:
- 自賠責保険・任意保険からの支払
- 労災保険の療養・休業・障害年金など
- 公的年金(障害基礎年金・障害厚生年金)
これらを損害賠償額から差し引く(損益相殺)方法が問題となった。
◆ 裁判の争点|損益相殺の「順番」どうする?
被害者側の主張(原告)
労災・年金などの給付金は、まず遅延損害金に充ててから元本に充てるべき。
→ そうしないと遅延損害金が支払われず不公平になる!
加害者側の主張(被告)
給付金は元本に直接充てるべき。
→ 元本が消滅したなら、そこから生じる遅延損害金も当然に消える。
給付された時点で「補填済み」とみなす
たとえ将来の損害(逸失利益)であっても、給付が制度通り支給されたなら、
その損害は「事故時点で既に補填された」と法律上みなすべき。
→ 給付が遅れていたとか、特別な事情がない限り、「遅延」は主張できない。
平成20(受)494 損害賠償請求事件
平成22年9月13日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 東京高等裁判所