目次
要約(事件概要・争点・判決結果)
◆事故の内容
札幌市の大通公園内で、自転車と歩行者が衝突し、歩行者である原告が負傷。原告は、公園管理に瑕疵があったとして、管理者の札幌市と指定管理者に損害賠償を請求(1684万円超)。
◆争点
- 大通公園に「瑕疵(安全性の欠如)」があったか?
- 自転車の乗り入れ防止措置は十分だったか?
- 損害との因果関係
◆裁判所の判断
❌ 札幌市・指定管理者に瑕疵なし → 請求棄却
✅ 自転車は少数で、走行速度も抑えられていた
✅ 車止め・注意喚起など一定の対策がされていた
✅ 観光地としての景観や利便性も考慮し、過剰な措置は不要
→ 「通常有すべき安全性を欠いていたとはいえない」として原告の主張を退けた
2. 判例の詳細解説
◆事件の背景と経緯
- 事故発生日:平成25年5月31日午後7時頃
- 場所:大通公園西6丁目区画内園路
- 加害者:公園に進入してきた自転車運転者
- 被害者:園路を歩いていた原告
- 原告の請求額:合計1684万7581円(治療費・逸失利益等)
◆争点1:大通公園に「瑕疵」はあったか?
▶ 原告の主張
- 自転車の乗り入れが常態化しており危険だった
- 周辺は歩行者・自転車の通行量が多い
- 道幅が狭く、イベントによる仮設物が障害になっていた
- 自転車侵入防止策(ポールやステッカー)は不十分
- 他都市では効果的な車止めや標識が設置されている
▶ 被告(札幌市・管理者)の主張
- 道幅6m以上で見通し良好、危険性は低い
- 車止めやステッカーによる対策は十分に機能
- 歩行者の利便性・観光景観も考慮し、過剰な措置は不適切
- 自転車の通行は1時間に30~40台程度と少ない
- 本件事故は、加害者(自転車運転者)の過失による個別事例
◆裁判所の判断ポイント
✅ 公園構造・通行量・景観配慮を考慮し、「瑕疵なし」と判断
- 走行速度は抑制されており、事故リスクは高くない
- 注意喚起は複数施策でカバー
- ステッカー(ポール貼付)
- 看板(西7丁目設置)
- 職員巡回
- 公式HPでの注意文言
- 他の自治体でも、物理的遮断をしていない公園は多い
- 歩行者と自転車の事故は、個別運転者の注意義務違反によるもの
◆自転車の乗り入れを防げなかったことへの反論
裁判所は、
🚫 ステッカーの記載や設置状況が不十分でも、重大な安全性欠如とはいえない
🚫 ポイ捨て条例と同様の厳格な取り締まりを期待する法的根拠なし
3. この判例の実務的な意味
◆地方自治体や指定管理者にとって
- 公園における事故でも、最低限の安全対策を講じていれば過失は問われにくい
- 景観・利便性とのバランスが重視される
- 全ての事故を想定して物理的に防止する必要はない
◆歩行者や市民にとって
- 事故が起きたからといって必ずしも自治体に責任があるとは限らない
- 加害者の過失が明白なケースでは、その個人責任を追及するのが基本
平成28(ワ)1063 損害賠償請求事件 平成31年3月5日 札幌地方裁判所