目次
要約(事故の内容・論点・裁判結果)
◆事故の内容
被告人は、居酒屋とスナックで約4時間半飲酒した後、自家用車を運転し、住宅街の道路で夜警中の4人をはね、うち2人を死亡させ、2人に軽傷を負わせた。
◆論点
- 運転時、アルコールの影響で「正常な運転に支障を生じるおそれ」があったか
- 単なる過失ではなく、危険運転致死傷罪が成立するかどうか
◆裁判結果
- 危険運転致死傷罪を認定
- 懲役10年の実刑判決(未決110日算入)
2. 判例の詳細(事故の経緯・裁判所の判断)
◆事件の概要(令和4年12月・堺市)
被告人は、居酒屋とスナックでアルコール度数の高い酒を多量に摂取し、その後車を運転。
住宅が立ち並ぶ片側1車線の道路を**時速64km(制限速度40km)**で走行中、左側を歩いていた4人に衝突。
2人が死亡し、2人が打撲傷などを負った。
◆危険運転致死傷が成立した理由
🔹アルコールの影響の明確な証拠
- 酒気帯び基準を大幅に超える血中アルコール濃度
- 防犯カメラには蛇行して歩く様子が映っており、酩酊状態が確認された
🔹事故の態様が通常では考えられない
- 歩行者の視認が可能な明るさと位置だったにもかかわらず、急ブレーキも回避行動もなしに衝突
- 衝撃で車が大きく破損しながらも、そのまま現場から逃走
🔹故意の認識も認定
- 自身の飲酒量と状態から、アルコールの影響下であると自覚していた
- それでも車を運転したことから、「正常な運転に支障をきたすおそれ」について故意があったとされた
3. 裁判所の量刑判断と評価
◆厳罰が科された背景
- 飲酒運転の常習性あり(過去に酒気帯びで罰金刑)
- 被害者2人が死亡、遺族の処罰感情も非常に強い
- 事故後に現場を走り去るなど、責任感に欠ける行動も
◆被告人の情状
- 損害賠償保険に加入、今後は飲酒しないと供述
- 兄による監督体制の意志あり
ただし、
「反省が浅く、供述はあいまいで責任と向き合う姿勢が見られない」
と裁判所は評価し、懲役10年の実刑判決を言い渡した。
令和5(わ)10 危険運転致死傷
令和5年9月29日 大阪地方裁判所