目次
要約(事故の内容・論点・裁判結果)
◆事故の内容
札幌市内の幹線道路で、被告人が赤信号を無視して交差点に進入。信号を守って進行してきた車に衝突し、運転手1名を死亡、他2名にけがを負わせた。
◆論点
- 赤信号を認識しながら交差点に突入した「殊更無視」の態様
- 被告人の人格傾向や動機が量刑に与える影響
- 被害者遺族の処罰感情や反省の有無の評価
◆裁判結果
- 懲役8年の実刑判決(求刑10年)
- 信号無視による危険運転致死傷として、中程度〜やや重い部類の犯情と判断
2. 判例の詳細
◆事件の背景と事故の経緯(令和4年11月・札幌市)
被告人は、白昼の市街地幹線道路で、赤信号を約115メートル手前で確認しながら、時速約90~92kmの速度で交差点に進入。
左方から信号通り進行していた車両と衝突し、63歳の運転手が死亡。さらにその衝突のはずみで別の車にも衝突し、2名が軽傷を負った。
3. 裁判所の判断ポイント
🔹① 「殊更に信号を無視」した危険運転を認定
被告人は信号を十分認識した上で、「急ブレーキよりそのまま進行の方が安全」と誤った判断をし、交差点に高速で進入。
裁判所は、「事故を起こす危険性が極めて高い運転態様」として危険運転致死傷罪を適用。
🔹② 犯行の動機や経緯に酌量なし
被告人は、バッティングセンターでの些細なトラブルなどから苛立ちを募らせ、感情のままに危険運転をしたと認定。
精神鑑定により特異な人格傾向は認められたものの、精神障害はなく、「正常心理の範囲内」と判断され、動機には情状酌量の余地なし。
🔹③ 被害者遺族への配慮や反省の欠如
- 被告人から具体的な謝罪や賠償措置は見られず
- 遺族は「誠意を全く感じられない」とし、重罰を求めた
- 被告人の母親による再犯防止の監督も困難と判断
令和5(わ)128 危険運転致死傷被告事件
令和5年9月29日 札幌地方裁判所