目次
要約(事故の内容・論点・裁判結果)
◆事故の内容
交差点で右折中の車と、赤信号で進入したバイクが衝突し、バイク運転手に怪我。車の運転者が「過失運転致傷」と「事故報告義務違反」で略式起訴される。
◆論点
- 被告人に右折進行時の注意義務があったか
- 警察への報告を怠った行為に可罰的違法性があるか
◆裁判結果
- 被告人に過失は認められず、事故報告義務違反も可罰的違法性なしと判断して無罪
2. 判例の詳細
◆事故の発生状況(令和3年10月・福岡県古賀市)
被告人は青信号に従って交差点へ進入し、対向車の通過を待って一時停止した上で右折を開始。
その際、対向車線の赤信号を無視して交差点に進入してきたバイク(B車両)と衝突。バイクの運転手は右足に骨折などの傷害を負った。
3. 裁判所の判断ポイント
🔹① 過失運転致傷について
裁判所は、被告人が「交差点内で信号の変化を確認し、直進車両が停止する状況を見てから右折開始した」ことを重視。
一方で、対向から来たバイクは赤信号になってから約1.6秒後に交差点へ進入し、前方の減速車を追い越して突入していた。
➡ バイク側の無理な進入が事故原因であり、被告人に過失はないと判断。
🔹② 事故報告義務違反について
事故後、両者は現場で会話を交わすも、バイク側が損壊の事実に言及せず自ら現場を離脱。
被告人は軽微な自車の損傷のみを認識し、警察に通報しなかった。
裁判所は、被告人が事故の主因ではなく、報告義務違反の可罰的違法性はないと結論づけた。
令和5(わ)12 過失運転致傷、道路交通法違反
令和5年10月27日 福岡地方裁判所