目次
要約(事故の内容・論点・裁判結果)
◆事故の内容
令和4年9月、札幌市内の信号のない交差点で、互いに見通しの悪い状況で進入した2台の車が出会い頭に衝突。衝突の弾みで1台が歩道に逸走し、78歳の歩行者をはねて死亡させた。
◆論点
- 交差点での徐行義務違反とその過失の程度
- 衝突後の車両の逸走と死亡事故との因果関係
- 被告人2名の刑事責任の重さとその分担
◆裁判結果
- 両被告人に禁錮2年6月・執行猶予3年の判決(実刑回避)
- 被告人Bの「死亡との因果関係なし」との主張は退けられた
判例の詳細解説
◆事故の発生状況
交差点の両角に植え込みや建物があり、互いに見通しが極めて悪い状況で、被告人A(貨物車)と被告人B(乗用車)が時速約30kmで交差点に進入。
適切な徐行を行わなかった結果、2台は出会い頭に衝突し、A車両が歩道に乗り上げ、歩行者C(78歳)に衝突。さらにそのままれき過(轢過)し、Cは死亡。
◆裁判所の判断(札幌地裁)
⚖️ 被告人Bの因果関係否定の主張について
被告人B側は、「死亡はAの操作ミスによるもので、自分には因果関係がない」と主張。
しかし裁判所は、交差点での衝突自体が歩行者死亡という結果をもたらす危険を内包しており、それが実現したと判断。
「操作ミスがなければ死亡は避けられた」としても、Bの過失と死亡との間に因果関係があると認定。
⚖️ 過失の程度と量刑判断
- 2人とも「見通しが悪いにもかかわらず徐行せず進入」という基本的注意義務違反があり、過失は重大。
- 死亡事故の深刻さ、遺族の厳しい処罰感情も加味。
- ただし、被告人らは過失を認め、反省し、再運転の意思もなく、保険による賠償も見込まれるため、実刑は回避。
令和5(わ)218 過失運転致死被告事件
令和5年10月31日 札幌地方裁判所