目次
要約(事故の内容・論点・裁判結果)
◆事故の内容
助手席に同乗していた内縁の妻が交通事故に遭い、第三者である加害車両運転者に損害賠償請求を行った事件。
◆論点
内縁の夫の過失(運転ミス)を、内縁の妻に対する過失相殺の対象(被害者側過失)として考慮できるかどうか。
◆裁判結果
- 原審(高裁):内縁の夫の過失を相殺に使えないと判断 → 被害者勝訴
- 最高裁:これを破棄し差戻し。内縁関係でも「被害者側過失」として考慮可能と判示。
判例の詳細解説
◆事件の概要
平成13年8月、群馬県前橋市内で交通事故が発生。
内縁関係にあった男性(A)が運転する車に、内縁の妻(被上告人)が助手席に同乗していたところ、交差点で加害車両(上告人)と衝突。被上告人は頸椎・腰椎の捻挫と精神的後遺障害を負い、加害者に対して損害賠償請求を起こした。
◆原審の判断(東京高裁)
- 被上告人が、内縁の夫の飲酒・無謀運転などを事前に認識していた事情はなし。
- よって、夫の運転ミスを「被害者側の過失」として相殺の対象にすることはできないと判断。
- その結果、約195万円の賠償金の支払いを命じた。
◆最高裁の判断(破棄差戻し)
- 内縁関係であっても、法律婚と同様に「身分上・生活上一体の関係」といえる。
- したがって、内縁の夫の過失は民法722条2項に基づく「被害者側過失」として考慮可能と判断。
- この原則に反して過失相殺を完全に否定した原判決には、法令違反があるとされ、破棄差戻しとなった。
3. この判例が示す重要ポイント
- 💡 内縁関係でも「過失相殺の対象」になり得るという、実務に大きな影響を与える判断。
- 💡 民法722条2項が適用される「一体性のある関係」には、事実婚も含まれるという明確な基準が再確認された。
- 💡 今後、家族関係や同乗者の立場に関わる交通事故訴訟では、この判例が重要な先例となる。
平成18(受)688 損害賠償請求事件 平成19年4月24日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻 原審 東京高等裁判所