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【入管不許可処分が取り消された理由】日本人の夫に捨てられた外国人妻、在留資格を勝ち取る|大阪高裁 平成8年(行コ)第60号

  • 日本人の有責配偶者(不貞・遺棄)による婚姻破綻では、外国人配偶者も「日本人の配偶者等」の在留資格を維持しうる
  • 入管による「在留資格変更不許可処分」が、裁量の逸脱・濫用として違法と判断された
  • 外国人配偶者が婚姻継続を望む限り、法的保護に値すると裁判所が判断

1. 事件の概要

タイ国籍の女性(控訴人)は、日本人男性(A)と婚姻し、「日本人の配偶者等」の在留資格で日本に在留していました。
しかし夫が不貞を行い別居。控訴人は別居後も婚姻関係の修復を望み、複数回にわたり在留期間の更新・変更を申請しましたが、入管(被控訴人)は「婚姻関係が破綻している」として不許可処分を下しました。
この処分の違法性を争い、控訴人が訴訟を起こした事案です。


2. 控訴人(外国人妻)の主張

  • 婚姻関係は夫Aの不貞・遺棄により破綻したが、自らは離婚意思はない
  • Aに戻ってくることを願い、ホステスとして働きながら生活を続けていた
  • 入管の不許可処分は、有責配偶者であるAの責任を全く考慮しておらず、不当な評価
  • 離婚すれば精神的・経済的に追い詰められる恐れがある

3. 被控訴人(入管)の主張

  • 控訴人は既に夫Aと別居して長期間が経過し、事実上婚姻は破綻
  • Aに在留資格更新のための協力を依頼する際、「離婚してもよい」といった発言や書面があり、婚姻継続の意思はないと判断
  • よって、「日本人の配偶者等」の在留資格を与える合理的理由は存在しないと主張

4. 裁判所の判断(大阪高裁)

裁判所は、入管の判断を事実誤認と評価の誤りにより違法と認定し、以下のように判断しました。

◆ 婚姻継続の意思は認められる

  • 控訴人は、離婚する意思はなく、むしろAの帰還を望んでいた
  • 離婚をほのめかす発言や離婚届の提出は、入管手続きでの更新協力を得るためのやむを得ない手段であり、真意ではない

◆ 有責配偶者の責任は重視すべき

  • Aは他の女性と駆け落ちし、子まで設けて生活しており、有責配偶者であることは明白
  • 離婚請求しても認められない状況であり、控訴人の「配偶者としての地位」は法的に保護されるべき

◆ 在留資格変更には「やむを得ない特別の事情」がある

  • 入管は「短期滞在からの変更には特段の理由が必要」と主張したが、本件ではその経緯(元々「配偶者等」の在留資格を持っていた)から、変更の必要性・相当性・やむを得ない事情すべてが存在すると判断

5. 判決と結論

  • 原判決を取り消し
  • 入管の不許可処分を取り消す
  • 訴訟費用は一審・控訴審とも入管(被控訴人)負担
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