- 夫からの離婚請求は、長期別居があっても「有責配偶者」の立場では認められないことがある
- 裁判所は、破綻原因が夫側にあり、慰謝の措置もなかったことを重視
- 判決では、正義や信義則に反する離婚請求として「棄却」された
1. 事件の概要
この裁判は、17年以上別居していた夫(原告)が、婚姻関係の破綻を理由に、妻(被告)との離婚を求めた事案です。
夫は自衛隊を退職後、家族を置いて単身で神戸へ移住。その後も数度にわたって離婚調停を申し立てましたが、成立には至らず、ついに訴訟を提起しました。
2. 原告(夫)の主張
- 家庭環境が悪く、被告が家事を怠り、夫婦喧嘩も頻発していた
- 勤務先にまで妻が来て迷惑をかけられたため、自衛隊を退職して別居に至った
- 別居期間は20年近く、すでに子供たちも独立しており、婚姻継続は困難
- 退職金も妻に渡すなど経済的清算は済んでおり、離婚は正当だと主張
3. 被告(妻)の反論
- 夫の退職・別居の原因は「女性問題」であり、家庭不和ではない
- 離婚届は無断で提出され、家庭を一方的に捨てられた
- 生活保護を受けながら3人の子を育てた苦労を理解していない
- 慰謝料など誠意ある対応も一切なく、離婚請求には応じられないと主張
4. 裁判所の判断
裁判所は以下の点から、夫の離婚請求を棄却しました:
- 婚姻破綻の主な原因は、原告の女性問題であると認定
- 退職後は生活費・養育費の送金もなく、家庭を完全に放置
- 慰謝料等の配慮も示さず、被告に無断で離婚届を出すなど誠意に欠ける行動
- たとえ別居が長期間に及んでいても、「有責配偶者」からの離婚請求は、信義則上許されないと結論づけました
5. 最終的な判決と賠償額
- 原告の請求をすべて棄却
- 慰謝料などの金銭的支払いも命じられておらず、賠償額はゼロ
- 訴訟費用もすべて原告が負担