目次
0.ポイント3点
- 大学院生が指導教授からハラスメントを受け、大学側の対応不備も争点となった
- 教授と大学に対して合計60万5000円の支払いが命じられた
- ハラスメント行為として認定された発言・行動と、大学の対応義務違反が認定された
1.事件の概要
本件は、早稲田大学大学院の元学生(原告)が、指導教員であった被告教授(当時)から受けたハラスメント行為と、大学(被告学校法人早稲田大学)の対応不備により精神的苦痛を受けたとして、損害賠償を求めた訴訟です。原告は慰謝料と弁護士費用を含め合計660万円を請求しました。
争点となったのは、教授によるハラスメント行為の有無、大学の適切な対応義務違反、そしてそれらによる原告の損害との因果関係です。
2.原告の主張
原告は、被告教授から次のようなハラスメントを受けたと主張しました。
- 外見に関する不適切な発言(「かわいい」など)
- 体への不必要な接触行為(飲み会での接触、電車内での身体接触)
- 性的な発言(「卒業したらおれの女にしてやる」)
- 他にも、指導内容や学内での行動に対して威圧的な言動を繰り返されたと訴えました。
また、ハラスメント被害を訴えたにもかかわらず、大学側(特に主任教授など)が十分な調査や被害回復措置を取らなかったと指摘しました。
3.被告らの反論
被告教授及び大学側は、多くの行為について
- ハラスメント行為の存在自体を否定
- または仮に発言や行動があったとしても、違法とはいえない と争いました。
特に大学側は、退学後の対応についても「在学契約終了により義務はない」と主張し、苦情処理手続きの不備も違法ではないと反論しました。
4.裁判所の判断
裁判所は、以下の点を認定しました。
- 教授による「卒業したらおれの女にしてやる」という発言や、授業中に「上着の下が裸だったらどうしよう」などの性的発言は、社会通念上許されない人格権侵害にあたる違法な行為である。
- 大学は、ハラスメント防止のための対応義務を負っていたにもかかわらず、適切な救済措置を怠った部分があり、一部債務不履行責任を負う。
- ただし、教授によるすべての行為が違法とまではいえず、また原告の退学については本人の自由意思も影響していると判断されました。
そのため、請求額全額ではなく一部が認められました。
5.最終的な賠償額
判決により、被告教授および早稲田大学に対して以下の支払いが命じられました。
- 教授と大学が連帯して原告に 55万円(年5%の遅延損害金付き)
- 大学単独で原告に対しさらに 5万5000円(年5%の遅延損害金付き)
合計で約 60万5000円 の賠償命令となりました。