目次
【ポイント3点まとめ】
- 消防職員への停職6か月の懲戒処分は裁量権の逸脱として違法と判断
- ハラスメントの認定は一部成立するも、懲戒処分が過剰とされた
- 処分手続きや非違行為の内容について裁判所が詳細に検討
1. 事件の概要
糸島市消防本部に勤務していた原告(消防士長)が、同僚に対するハラスメント行為を理由に、消防長から停職6か月の懲戒処分を受けた事件です。
原告はこの処分が違法であると主張し、取消しを求めて訴訟を提起しました。
2. 原告の主張
原告は主に以下の点を主張しました。
- ハラスメント防止規程には法的拘束力がないため、違反を理由とした処分は違法。
- トレーニングや訓練行為は業務の一環であり、いじめや暴力には該当しない。
- 指導目的であり、故意のハラスメントではないため懲戒事由には当たらない。
- 過去の行為を処分対象とすることは裁量権の逸脱に当たる。
- 手続き上、正しい懲戒手続が踏まれていない。
3. 被告(糸島市消防本部)の反論
これに対して糸島市消防本部側は、
- ハラスメント防止規程に反する行為は地方公務員法上の懲戒事由に該当する。
- 非違行為の態様は悪質で、停職6か月は妥当な処分である。
- 処分に至るまでの手続きに違法はなく、裁量権の逸脱もない。 と反論しました。
4. 裁判所の判断
福岡地方裁判所は、次のように判断しました。
- 一部のハラスメント行為(不適切なトレーニング方法、暴力的な指導など)は認めた。
- しかし、停職6か月という処分は、原告の行為の性質・態様・結果などを総合しても重すぎ、裁量権の逸脱・濫用に当たると判断。
- 懲戒処分は違法であり、取消しが相当であると結論づけました。
- なお、処分手続きに関する原告の主張(手続違反)は検討せずとも、処分の違法が明らかだとしています。
5. 最終的な賠償額
今回の訴訟では、懲戒処分の取消しのみが争点であり、賠償額についての争いはありません。
結果として、原告の停職処分は取り消され、訴訟費用は被告(糸島市消防本部側)の負担となりました。