ポイント3点
- 協議離婚において、親権者の取り決めが未成立でも離婚自体は有効
- 離婚届が受理された以上、協議内容に不備があっても効力は妨げられない
- 親権者の記載に問題がある場合は、戸籍訂正と親権者の再協議が必要
目次
1. 事件の概要
この事件は、協議離婚届が提出されたものの、子どもの親権者について実際には合意がなかったことを理由に、離婚無効を求めた訴訟です。
しかし、裁判所は「離婚そのものは有効」と判断し、控訴を棄却しました。
2. 控訴人(夫)の主張
控訴人は、協議離婚届は自身の真意に基づかないものであり、さらに子どもの親権者について合意が成立していないため、離婚は無効だと主張しました。
また、親権者欄に勝手に被控訴人(妻)が自分の名前を記載したとも訴えました。
3. 被控訴人(妻)の反論
被控訴人は、離婚については控訴人と合意のうえで行われたものであり、協議離婚は有効であると反論しました。
子どもの親権については一方的に自分の氏名を記載したものの、それによって離婚の効力が失われるわけではないと主張しました。
4. 裁判所の判断
名古屋高等裁判所は、次のように判断しました。
- 協議離婚は、夫婦間に離婚の合意があった時点で成立する。
- 親権者の取り決めは協議離婚の要件だが、仮に協議が成立していなくても、離婚届が受理されれば離婚自体は無効とはならない(民法765条2項の趣旨)。
- 本件では、親権者に関する協議は未成立だったものの、届出は受理されており、離婚の効力は妨げられない。
- 離婚後は控訴人と被控訴人の共同親権が継続中であり、戸籍上の記載を訂正し、改めて親権者を定めるべきである。
よって、控訴人の離婚無効確認請求は理由がないとされ、控訴は棄却されました。