ポイント3点まとめ
- 離婚後の単独親権制度は憲法違反ではないと判断
- 民法819条2項の改廃を怠った国の立法不作為も違法ではないと判断
- 原告の損害賠償請求(165万円)は棄却、訴訟費用も原告負担
目次
1. 事件の概要
本件は、離婚訴訟で子の親権者と定められなかった原告が、民法819条2項(裁判離婚の場合、父母の一方を親権者と定める規定)が憲法13条、14条、24条、また自由権規約や児童の権利条約に違反していると主張。
国会が同条改廃を怠った立法不作為について国家賠償責任を問うた事案です。
原告は精神的苦痛に対する慰謝料150万円、弁護士費用15万円を請求しました。
2. 原告の主張
- 親が子を養育・教育する権利(親権)は憲法13条により保障される人格的権利であり、単独親権制はこれを侵害している
- 父母間・子ども間で合理的理由のない差別が生じ、憲法14条に違反する
- 両親の平等を定めた憲法24条2項にも反する
- 自由権規約や児童の権利条約、ハーグ条約にも違反している
- 国会は長期にわたり立法改正を怠っており、その立法不作為は国家賠償法上違法である
3. 被告(国)の反論
- 親権は憲法上保障される権利ではなく、民法上の制度にすぎない
- 離婚後、親権者を父母の一方に定めるのは、子の利益保護のためであり合理的
- 現行制度でも親権者変更の申立ては可能であり、不合理とは言えない
- 条約違反も認められず、国会に立法作為義務は生じない
4. 裁判所の判断
東京地裁は、以下の理由により原告の請求を棄却しました。
- 親権は「子の利益」のための制度であり、親の自己実現の権利とは異なる
- 現行の単独親権制度は、離婚後の混乱回避や子の福祉を守るため合理的
- 憲法13条、14条、24条、各条約への明白な違反とはいえない
- 仮に法改正が望ましいとしても、立法裁量の範囲内にあり、国家賠償の対象とはならない
5. 最終的な賠償額
- 原告の請求(165万円)棄却
- 訴訟費用も原告の負担