ポイント3点
- 離婚届に署名・押印した時点で親権合意も推認される可能性あり
- 署名後に異議を唱えず放置すると、無効主張は認められにくい
- 裁判所は「控訴棄却」し、親権者指定は有効と判断
目次
1. 事件の概要
本件は、元夫(控訴人)が元妻(被控訴人)に対して、離婚届に記載された長男C(平成5年生)の親権者を被控訴人とする協議は無効だとして、その確認を求めた裁判です。
控訴人は、離婚届への署名押印はしたものの、親権については同意していないと主張しました。
しかし、原審は控訴人の主張を認めず、控訴を受けた高裁も同様に、控訴を棄却しました。
2. 原告(控訴人)の主張
控訴人は次のように主張しました。
- 離婚自体は了承したが、親権者は自分とする意図だった
- 離婚届に署名押印した際、親権者については後で協議する予定だった
- 被控訴人が勝手に親権者を自分(被控訴人)にして届出をした
- 離婚後も子供Cを自分の元に置いて養育していたため、親権問題は未解決だった
3. 被告(被控訴人)の反論
一方、被控訴人はこう反論しました。
- 控訴人は離婚届に署名押印し、特に親権指定について異議を唱えていなかった
- 戸籍証明書を控訴人の机に置き、電話でも伝えたが、控訴人は何の対応もしなかった
- 離婚後、控訴人は親権者変更の調停を申し立てたが、無効確認の訴えを起こしたのは後になってからであり、当初は親権合意を認めていたはずだ
4. 裁判所の判断
裁判所は次のように判断しました。
- 離婚届に署名押印し、かつ捨印まで押して提出していた点から、控訴人は親権者を被控訴人とすることを了解していたと推認できる
- 署名後に離婚届が提出されていることを知ったはずなのに、抗議や行動を起こしていない
- 仮に控訴人が親権者を自分に指定する意向だったなら、離婚届への対応が不自然であり、供述にも矛盾がある
- 被控訴人がグアムへ渡航していた事実はあるものの、親権合意に直接関係があるとは認められない
この結果、控訴人の主張は認められず、控訴は棄却、親権者指定協議は有効とされました。