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有責配偶者からの離婚請求は認められる?36年別居後の離婚請求に最高裁が示した判断とは 昭和61年(オ)第260号

ポイント3

  • 有責配偶者でも、長期間の別居があれば離婚請求が認められる可能性がある
  • 相手方にとって精神的・経済的に極めて苛酷な状態とならないかが重要
  • 離婚請求と財産分与を一体で考慮する流れが示された. 最終的な賠償額は確定していません
目次

1. 事件の概要

この事件は、夫(上告人)が不倫相手と同棲し、妻(被上告人)と36年以上別居した後に、離婚を求めた裁判です。夫は以前も離婚を求めましたが敗訴しており、今回は長期間の別居を理由に再び離婚を求めたものでした。原審(東京高裁)は夫の請求を棄却しましたが、最高裁はこれを破棄し、再審理を命じました。


2. 原告(上告人)の主張

夫側は次のように主張しました。

  • 婚姻関係は完全に破綻している
  • 共同生活を営む意思はなく、36年以上別居している
  • 年齢も70歳を超えており、婚姻の回復は不可能
  • かつて所有していた財産も妻に渡しており、離婚は認められるべきだ

3. 被告(被上告人)の反論

一方、妻側は次のように反論しました。

  • 夫が不貞行為を行い、その責任で婚姻が破綻した
  • 離婚する意思はない
  • 経済的にも困窮しており、離婚すれば精神的・経済的に過酷な状況に陥る

4. 裁判所の判断

最高裁は次のように判断しました。

  • 民法770条1項5号(婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき)により、離婚は可能
  • 有責配偶者(ここでは夫)からの離婚請求も、長期間の別居や相手方に未成熟の子がいないなどの事情があれば認められる
  • ただし、離婚によって相手方が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態になる場合は、離婚請求は認められない
  • 財産分与などで相手方の経済的不利益を解決することも考慮すべき

このため、ただちに夫の離婚請求を認めるのではなく、特段の事情(精神的・経済的に苛酷な影響がないか)を再度審理する必要があるとして、原判決を破棄し、東京高裁に差し戻しました。


5. 最終的な賠償額

この判決では最終的な賠償額は確定していません。ただし、差し戻し審において、財産分与や慰謝料が検討されることになります。具体的な額は今後の審理に委ねられることとなりました。

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