目次
要約|この判例のポイントはここ!
事故の内容
加害者が運転する車が、前方を走行中の被害者車両に追突。衝撃は軽微だったが、被害者は頭痛やしびれを訴え、長期療養に至った。
論点
① 事故と長期症状との因果関係はどこまで認められるか?
② 被害者の「心因的要因」も考慮できるか?
裁判結果
事故から3年以内に発生した損害についてのみ、4割の賠償を認めた。
被害者側の性格や過剰な治療継続が損害拡大に影響したと判断し、過失相殺の規定を「類推適用」した。
2.判例の詳細|最高裁がどう判断したか?
事故概要
1970年(昭和44年)、静岡県浜松市で発生した軽微な追突事故。
加害車のドライバーは、前を走る車(被害車)に軽く接触。
目立った損傷はなく、事故直後、被害者側も「異常なし」と答えていた。
しかしその後、被害者(上告人)は首の痛み、頭痛、吐き気などを訴え、長期にわたって治療を継続。さらに寝たきりに近い状態になったと主張していた。
主な争点
- 事故と症状の因果関係
- 軽微な事故にもかかわらず、長期の症状が事故によるものといえるのか?
- 損害の拡大に心因的要因が関与
- 被害者側の性格(自己暗示にかかりやすい・神経症傾向)や過去の事故経験、不満などが悪化に影響していないか?
最高裁の判断ポイント
✅ 事故直後に発症した「外傷性頭頸部症候群」(むち打ち症状)は、事故との因果関係あり。
✅ しかし、その後の悪化(神経症状固定化)は被害者自身の性格・態度にも原因がある。
✅ 損害賠償の公平を保つため、民法722条2項(過失相殺規定)を類推適用し、負担割合を減らしてよい。
結果として、
- 事故後3年以内に発生した損害のみ
- そのうち4割分のみを加害者側が賠償すべきと判断した。
昭和59(オ)33 損害賠償請求事件 昭和63年4月21日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却