- 道路施設(定置式凍結防止剤自動散布装置)を破損した場合でも、現存価値を超える負担は違法と判断。
- 道路管理者による復旧工事費全額負担命令の一部が取り消された。
- 減価償却による現存価値を基準に、支払義務額が225万1200円に限定された。
目次
1.事件の概要
本件は、交通事故により道路に設置されていた定置式凍結防止剤自動散布装置を破損した原告が、道路管理者である被告から復旧工事費用351万7500円の全額負担を命じられた処分に対して、その取消しを求めた訴訟です。原告は、装置の減価償却を考慮すれば現存価値以上の負担は不当であると主張しました。
2.原告の主張
- 道路法58条1項にいう「必要を生じた限度」を超えた負担であり違法。
- 装置は設置から数年経過しており、減価償却により現存価値は136万0800円にすぎない。
- 損壊当時の現存価値を超える支払い命令は、憲法29条の財産権保護にも違反する。
- 相当因果関係の原則からも、過大な負担は認められない。
3.被告の反論
- 道路法58条1項は、民法の損害賠償とは異なる公法上の負担規定である。
- 機能回復を目的とするため、現存価値にかかわらず、復旧費用全額を負担させることが適法。
- 新品の調達しか選択肢がなかったため、復旧費用はやむを得ない。
- 被告の裁量行使に違法はない。
4.裁判所の判断
- 道路法58条1項は、原因者負担制度であり、管理者に広い裁量を認めるものの、衡平の観点から無制限ではない。
- 装置は設置後2年9ヶ月経過しており、更新予定の施設であったため、現存価値を超える負担は不当。
- 減価償却率を基に装置の現存価値を算出した結果、225万1200円と認定。
- よって、本件処分のうち225万1200円を超える部分を違法とし、取り消した。
5.最終的な結論
- 被告が原告に命じた復旧費用負担処分(351万7500円)のうち、225万1200円を超える部分を取り消す。
- 訴訟費用は、原告が2/3、被告が1/3を負担することに。