- 事故後に別原因で死亡した場合、死亡後の介護費用は損害賠償請求できない
- 死亡後も逸失利益は損害と認められる
- 裁判所は介護費用と弁護士費用請求部分を破棄し、差し戻し判決
目次
1. 事件の概要
平成3年9月18日、兵庫県内で発生した交通事故により、自転車を押して横断していた被害者(亡D)が、普通乗用車に衝突され、脳挫傷や外傷性くも膜下出血などの重傷を負いました。
その後、重度後遺障害により寝たきりとなり、完全な介護を必要とする状態になりましたが、訴訟中の平成8年に胃がんで死亡しました。
被害者の妻と子供たちは、被害者の事故による損害賠償を請求し、死亡後も逸失利益や介護費用の賠償を求めました。
2. 原告(被害者側)の主張
- 交通事故による後遺障害に基づき、逸失利益および死亡後も必要であったはずの介護費用の賠償を請求。
- 胃がんによる死亡は事故とは無関係であり、事故による損害賠償の範囲から死亡事実を除外すべきと主張。
3. 被告(加害者側)の反論
- 被害者は既に死亡しており、死亡後の介護費用は現実には発生しないため、介護費用の賠償請求には根拠がないと主張。
- 逸失利益についても、死亡事実を考慮して減額されるべきと主張したが、こちらは認められなかった。
4. 裁判所の判断
最高裁判所は、以下のように判断しました。
- 逸失利益について:事故時点で死亡の具体的予測ができない限り、死亡事実は考慮しない。よって、死亡後も逸失利益の請求は認められる。
- 介護費用について:死亡により介護は不要となるため、死亡後の介護費用について損害賠償請求は認められない。
- 弁護士費用も、介護費用請求に関連する部分については破棄対象とする。
このため、原判決のうち介護費用および弁護士費用に関する部分は破棄され、大阪高等裁判所へ差し戻されました。
5. 最終的な賠償額
本判決では最終的な賠償額自体は確定していませんが、
- 逸失利益:約1,306万9,243円
は認定されました。
死亡後の介護費用(約5,197万円相当)は認められず、再審理で最終額が決定されることになりました。